2008-0901GuitarCLUB
伊東福雄さんによる健康生活〜ギターライフ。
今回は、先生愛用のギター、ロマニリョスについて。
、じつはここだけの話…と施された改造について伺いましたが
そのポイントはすべてとても参考になる話だと思います。
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○●○ | 福雄先生のギターはロマニリョスでしたよね?![]() |
伊東 | そうです。でも、ここだけの秘密だけど、 ふだんうちでは使ったことがないんですよ。 本番とそのリハーサルだけ。 そのほうが楽器の持ちがいいんです。 |
○●○ | え!? 毎日少しずつでも弾き込んだ方が ギターにはいい、と聞かされてきましたが? |
伊東 | 入手して三年間くらいは一生懸命弾いて鳴らそうとしましたよ。 それ以降はコンサートが月に何10回とあるようになったら コンサートの度に弾いていればいいな、と。 たぶん、年間100日くらいは触っていたと思うんです。 |
○●○ | ああ、なるほど。 |
伊東 | それ以後は、ふだんは弾かない。だからいつも 新品同様(笑)。 |
○●○ | へえ。とはいえ、いいかんじに焼けて、雰囲気がありますね。 |
伊東 | 最初は真っ白だったのにね。 あ、それと、これはもうひとつ秘密なんだけど これまでに何回も拭いたり磨いたりしたことがないの。 |
○●○ | へええ!? |
伊東 | つばが飛んだりしてもそのまま。出しっ放しのときは出しっ放しだし。![]() |
○●○ | この20フレットは最初からつけてもらったんですか? |
伊東 | そのへんは、あとから。というか、 このギター、これも秘密ですけどけっこう改造しているんです。 |
○●○ | どんなところですか? |
伊東 | ブリッジ部分で1〜6弦の弦幅を調整して変えてます。 これ、重要だと思うんですが、ようするに、手の指のここの幅で セーハが押さえられるようにするのがいいのではないか というのが持論で、そのように調整しています。 そのぎりぎりが本来ギターを弾く上での幅だと思うんです これがいま41mm。 ![]() これはつまり、こうセーハをやるときに 指を直線にしなくてすむでしょ? 直線にするということが、もうすでに力が入ることになってしまうから。 これが握っている状態と同じだったら へんな力を入れなくてすむでしょ? こういう基準で見たら、みんな大きな楽器を使っていますよね。 |
○●○ | わかりやすい物差しですね!初めて聞きました。 表立ってそういうふうに発言している人は今まで皆無かもしれません。 |
伊東 | 無理のない、いい押さえ方をするには、大切な要素 だと思うんですよ。 そのために、それにあった楽器をまた探したり 作ったりすることもないと思って 自分の手に合わせてネックの裏を薄くしたりしているんですよ。 標準的に作られた楽器に比べて太くないんです。 |
○●○ | ああ、馴染んでそうですね。 |
伊東 | それからここを触るとわかるんですが ヒールのここ、裏から見て左側を薄くしています。 ![]() 右側は演奏には関係ないですよね。 そうするとハイポジションで演奏するときに、 親指の力の入り方がかなり違う。 11フレットとか12フレットセーハとか あるいはそれ以上で演奏するときラクなんです。 ということは、ヒジを前方に張り出してフォームを変える必要がないんです。 ![]() |
○●○ | おお!そうですね。 |
伊東 | そういう工夫をして力が抜けるようにしていますね。 イエペスが、こういうハイポジションを 使うじゃないですか。 あのひとは手がそんなに大きくいないのに 親指をこうやっているんです。 普通の人はこうやって、それで不安定になっている。 でもこの中でこういうかたちで押さえていますね。 このことに気がついたらああ、なるほどな、と思いましたね。 |
○●○ | ははあ…。 |
伊東 | それと、これはジョン・ウィリアムスの演奏を たまたま後ろから見る機会があって気がついたんだけど 彼もまた、 親指のポジションがはずれていくことは 一つのコンサートの中で2、3回しかなかったのね。 セーハがあろうがなかろうが。 |
○●○ | なるほど、それでフォームも崩れない。 |
伊東 | なぜそんなことができるのかな?という延長に 楽器と手の関係、ネックの幅、弦の幅が自分の手に合っていることが すごく重要だっていうことに気がつかせられた。そういうのがわかったんです。 |
○●○ | なるほど。 |
伊東 | そういうことからも、彼らは 故障を呼ぶようなことはしないんですね。 ただ、これは製作家も言うんだけど、 左右対称じゃないと売れない、対称があたりまえって。 |
○●○ | ふむふむ。でもこれくらいだと見た感じでは気がつきにくいですよね。 |
伊東 | うん。で、まあこのネックの裏の山も左右均等ではないんです。 自分が弾きやすくなるように削ってもらって調整しているんです。 |
○●○ | そういった調整はいつ頃どんなきっかけでほどこしたんですか? |
伊東 | ギターは1975年製ですが、20年くらいはそのまま弾いてました。 |
○●○ | ギターレストも使い始めて長いんですよね。30年? |
伊東 | そう、、そのくらい。ここにつけているのは3代目かな。 今はこっちのギターサポーターが気に入っているんですよ。 つけっぱなしでケースに入るし、 客席から見てもあまり目立たない。 マリア・エステル・グスマンに教えてもらって 使い始めたの。いいですよ。 ただ、この2種類では、正確に同じポジションが とれるわけではない。ずれるんですよ。 |
○●○ | それが解決するといいですね。このギターは…? |
伊東 | つつみさん。北浦和にいる方です。野辺さんのところにいた方ですね。 |
○●○ | ふだんはこの2本を使い分けているんですね? |
伊東 | そう、ロマニリョスは少し休めた方がいいということで、 出番を調整する意味もあってね。 大谷環のと兄弟楽器なんです。ナンバーが一つ違い。 このふち飾りはブリームがビデオで弾いていた楽器と同じなんですね。 アラベスク、イスラムのアーチと言うかね。 割れたりなんだと表面板以外、いろんな修理がほどこされていますよ。 話は全然違いますがこれ、昔作ったんです。日曜大工で。 ![]() 使えるものをそこに置いて。 今はキャリアをつけちゃったけど。 これがいいでしょ。開くんです。 ![]() これがもうね、30年経っちゃって。 これが楽器を引っ掛けて置けるといいな、と。 ようするにこんなようなもの。、 これで一式もってどこでも行けると。 本来の台車 それでこれは僕の友達が作ってくれた足台。 201618これがここに入るんです。 引き出しは縦でも横でも入れられる。 で、いまは三角定規でこういうふうに起こして 譜面を置けるようにしているの。 一生もっています |
(続きます)
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2008-09-01-MON
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